あなたの初恋はいつですか?3
人間、自分の強みを活かして生きていけばいい。僕は常々そう思っている。苦手を頑張って克服していくのも素晴らしい。でもその時間を得意なことに投資したならば、どれだけ自己成長し、まだ見ぬ世界へ進めるのだろう。
そんなことを思いながら、直接告白できない自分を肯定するのであった。
僕は上手く言葉で自分の気持ちを伝えられない分、文章で、丁寧な文字で思いのたけを伝達することには自信があった。これで振られたとしても、後悔はない。
今考えたらよくやったなと思うが、この時点でまだ彼女と二人きりで話したことはなかった。中学生の恋愛あるある?社会人になった今考えたら、そんなに喋ったことない人から、いきなり告白されても驚きしかないはずだ。あるいは恐怖か。ある意味勇者だ、当時の僕は。
「○○さんへ
突然ごめんね。
でも、伝えたいなと思って。
ずっと○○さんのことが好きでした。
よかったらメルアドに返事くれたらうれしいです。
○○○○○○.web.co.jp 」
よし、書けた。ちょっとシンプルすぎるけど、伝えたいことは一つなんだ。それが伝わればいい。あとはどういう風にこれを渡すか。
僕には秘策は、
なかった。
次の日、ちょうど1時間目の授業が終わって、「起立、礼、着席、ありがとうございました」をしたと同時に、意を決して彼女のいる席へと歩き出した。
誰かと喋りだしていたらどうしようと一抹の不安を抱いたが、その瞬間彼女は一人で教科書を眺めていた。
「... あの、これ。。」
不器用にそう発したあと、昨日書いて折りたたんだラブレターをちょこんと机に置いた。ちゃんと手紙の外側に「あとで読んでね」と、暗に一人で読んでほしいことを明示しておいて。
めちゃくちゃ緊張していたと思う。彼女の不思議そうな顔を一瞬見て、恥ずかしさがMAXになり、その場から逃げ出した。次の授業が教室移動する科目だったから助かった。
その移動中の廊下で女子2人の甲高い声が聞こえた。
「えーー!それ告白じゃん!」
やれやれ、どうやら女子とは感情を共有したい生き物らしい、とそのとき理解した。
「え!告白だってそれ絶対!」
廊下に響き渡る声。
穏便に物事を進めたいという、僕の思惑とは逆方向へ事態は展開していく。
イベント発生に歓喜する女子の気配を背後に感じながら、
顔を真っ赤にして僕は廊下を歩くのであった。