あなたの初恋はいつですか?2
あなたの初恋はいつですか?2
「○○くーん、ちゃんとお皿並べて!ぼーっとしてないで!」
その日は給食当番で、僕が皿を並べて、彼女がその上に料理を盛るという役割だった。昼過ぎになると急に学校に飽きて、上の空になるという現実逃避の時間を設けていたが、このタイミングはまずかった。サッカーでいうと、試合が始まるってのに、いつまでも審判がボールを抱えているようなものだ。中学生といえど、仕事はまっとうしたい。
まだこのころはSMなどには目覚めてなかったが、やはり好きな子から叱られるのはいいな。普段女子と接点がないから尚更味わいがある。
テニス部だった彼女は、いつもグラウンドで素振りをしていた。「そーれ」という掛け声は、気合いを入れるために発声しているのか、僕たちの気を惹くためにしているのかわからないほど、無駄に甲高く可愛かった。
野球部の練習中も背後のテニス部を意識して、チラチラと背中で、できる男感をアピールしていたな。たぶん100%伝わっていないと思いながら。たまに、ボールがテニスコートの方に転がってしまって、拾いに行くと君は思いっきり投げ返してくれたね。そのときのフォームがとてもツボだった。いい意味で可愛くない、一生懸命さも魅力だ。
冬が近づいてきたころ、急に胸が苦しくなってきた。ストレス性の心臓発作か?この若さで。そんな心配をしながら学校で君を眺めていた。さらに動悸は激しくなっていった。どうやら病気の原因は君のせいらしい。
中学生の僕はこう考えた。この悩みは勉強や部活とは違う。今までたいてい自分が頑張れば、努力の方法が間違っていなければ、順調に成果が出て、そんな自分に満足できた。でも、今回は違う。一人では解決できない問題だと察知した。この気持ちを君に伝えなきゃ。気持ちを伝えることで感情のモヤモヤが晴れるし、何より君がどう思っているのか知りたい。ただ、それだけだ。
よし、告白しよう!
でも対面はやめよう。なぜなら僕は、女の子を目の前にすると、うまく喋ることができないから。せいぜい「うす」くらいだ。ちょっと今日話があって.....「うす」ってそんな新手の告白あってたまるか。女の子からしたら、恐怖以外の何ものでもないだろう。大人になった今考えたら面白いが、当時は失敗できない状況下で手紙という選択肢を選んだ。
そう、ラブレターだ。