あなたの初恋はいつですか?
僕の初めての彼女は、中学2年生のときにできた。
当時はコブクロやAquaTimezが流行っていて、
音楽番組がある日はテレビの前に張り付いて観たものだ。
映画だとちょうど”恋空”が大ヒットして、
ませた女子たちはみんな、三浦春馬に恋をしていたようだった。
クラスで冴えない僕は、入学してからというもの、
恋のチャンスが訪れるわけもなく、部活に熱中していた。
帰りに野球部の仲間と、今後の日本の展望だとか勉強することの意味とか
よくわからないうんちくを語り合って楽しむ日々。
完全にモテる要素が一つもなくて笑える。
よく野球部はモテるというが、モテるのはイケイケでクラスの真ん中で転げまわるようなやつで、こっちには一度も”打順”は回って来ない。
だいたい、坊主に近い短髪で勝負しているんだ。
おしゃれなパーマや髪色の、サッカー・バスケ軍団に勝てる見込みはない。
女の子たちに目を向ければ、それはもう恋への憧れが、内側から外側から溢れていて、近寄りがたいほどだ。恋愛ドラマや恋愛映画、そしてケータイ小説。あらゆる媒体から恋愛を切り取って搾取する天才かと思ったほど。
男子がスポーツやアニメ、ゲームに必死になって精を出している中、
彼女たちは一心不乱に恋への意欲を見せ、成長していく。
常に僕らの一歩先を進んでいる。そりゃ、追いつけるわけないよ。
男子がようやく恋に目覚めるその頃には、
「恋愛と結婚」は別とか言い出すんだもん。理解できるはずもない。
そんな中学時代の僕の最初の恋愛、初恋の子は、
魔性の女になる才能があるような特別な魅力を持った子だった。今思えば。
見つめられると吸い込まれそうになる。
見るたび心が不思議な気持ちになる。
そんな瞳をしていた。
イメージは篠田麻里子風だけど、もっと不思議な黒目だったな。
当時の僕が、クラスで女の子と話すときといえば、
プリントを配られるときくらいだ。
前の席の女の子が振り向いて、紙を渡してくれるタイミングで「うす」と言う。
完全に変質者だ。ただ、僕だって、クラスメートに対して礼儀を重んじていたので、「うす」という独自の挨拶だけは、きちんと徹底していた。
彼女とは、なんかのタイミングで同じ班になったのだと思う。
誰にでもフレンドリーに接してくれる親切な対応に、落ちた。
理由はそれだけで十分だった。
モテない男ってのは、95%の勘違いで構成されている。
ぜひ、女性の皆さん、彼らにはビジネスライクに接することを心がけてほしい。
「○○くーん」
急に、彼女から名前を呼ばれた。